「ローコスト住宅」と単純に聞くと、価格を抑えた住宅ととらえがちだが、果たして真のローコスト住宅とは何か?考えてみよう。
そもそも家にはどんな費用がかかるのか?
家を建てるときにかかる費用はイニシャルコスト、つまり建築費、家を建てた時に工務店やビルダーに直接払う費用だ。
次に、住んでからかかる費用には、ランニングコストとライフサイクルコストがある。ここがミソだ。
ランニングコストには光熱費が一番に上げられる。断熱性能や気密性能を高くし、省エネの給湯器・エアコンといった冷暖房機器を採用すれば光熱費は大きく下がる。当然高性能なだけに初期コストは高くなる。電球やフィルターの交換、水栓金具のパッキンなどあまり性能に関係しないものはこちらに加える。
また、ライフサイクルコストとは外壁の塗り替え費用やアフターメンテナンスの費用、給湯器や冷暖房機器、システムキッチン・お風呂等の換気扇、水栓金具、網戸の交換、内装の張り替え、雨樋の交換といった細々としたものを含む、それぞれの耐久性によって変わってくるものの費用の総計のことである。当然こっちも高性能なものは耐久性が高くなるので価格は高くなる。
そう、真のローコスト住宅とは3つのコスト、イニシャルコスト・ランニングコスト・ライフサイクルコストの総計が一番低くなる住宅のはずである。
ところが実際には、“家なんてどこで建ててもそんなに変わらないはず”との思いから、出来るだけ価格は低い方がいいと、広告宣伝に「ローコスト住宅」とあるとどうしても目がいってしまう。ここに注意が必要だ。工務店・ビルダー・ハウスメーカーといった建築業者がローコスト住宅といった場合、“建てるときに如何に費用を抑えるかに特化した住宅”という意味で使われていることが多い。
家を建てるときにコストを抑えるとは・・・
- 耐震性能:最低限建築基準法といった法律を守るレベルの耐震性能に抑えて、構造用金物や構造材の費用を抑える。
- 省エネ(断熱)性能:断熱・気密・換気といった省エネ性能に関する工事はしっかりとした工程と技術・経験が必要で専門業者による工事が望ましいが、法律の定めがないのでコストを抑えるには、工事を大工さんに任せ、工程と費用を出来るだけ抑えてフラット35(旧住宅金融公庫)の基準に達すればいいほう。
- メンテナンス性能:今の工事費用を如何に抑えるかが大切だから、将来の維持管理や音のことは余り考えず、工程を短く、配管は最短距離で手間を少なくし、配管も音への配慮がないコストの安いものを使う。
- 住宅設備:システムキッチンやユニットバス(お風呂)、洗面化粧台、トイレ、給湯器なども、どれも新品の時は見た目に大差がない。逆に大差はないが住設メーカーさんのショールームに行くと様々なグレードのものが展示してありその価格差も100万円単位で変わってくる。20年で入れ替えれるくらいの価格差があるのでここは価格勝負で問題ない。ホーローやステンレスといった素材そのものの違いは10年単位のスパンでは顕著に出てくる。コストにこだわるなら機能やデザインではなく素材にすべし。
- 外装:外装の中で一番多いサイディングだが、塗装の種別により価格が数十万円単位で上がっていく。親水性や光触媒、フッ素といったものは通常のものより5~15年ほど色持ちがいい。塗り替えスパンが長くなるが注意すべきは継ぎ目につかうコーキング。こちらは通常5~8年ほどで増し打ち等の検討が必要なものである。いいものを使うときはこのコーキングもいいものを使わなければ意味がない。さらに塗装持ちのよい金属サイディング、左官壁、タイル壁とコストが上がっていく。タイル壁になれば塗り替え等は不要だがコストも2回塗り替える以上に跳ね上がると思った方がいい。一番安いサイディングはコスト通り早々に見た目も悪くなることを覚悟しておくべきである。
- 内装:如何に早く安く仕上げるかに着目すれば、石膏ボードの上に量産クロスと言われる少し厚手の、柄のほとんどないビニールクロス貼りとなる。大工工事費も抑えるため、壁厚を利用した収納や飾り棚(ニッチ)等はないものと思うべし。工場にてほぼ加工も済ませた建材を使うことで大工技量の必要のない工事とすることで、工務店では現場を任せられない未熟大工に工事を任せることでコストを抑えているので、造作を伴う工事やほんの少しの特別工事は別の大工の手配をしなければいけないといった目に見えないコストUPとなる。珪藻土や漆喰といった左官壁やタイル、板の壁は機能・デザインに優れているが、コストは上がる。多少なりともデザイン・機能を求めたとき、それらが得意な地元のビルダー・工務店の方が一気にイニシャルコストが安くなる。自然素材などはもってのほかである。
- アフターメンテナンス:こちらはどこで建てたかが一番大きく変わってくるところだろう。ある大手ハウスメーカーは50年保証とか宣伝しているが、キッチンの水栓を取り替える数千円程度の工事でさえ、自社のものを使わないと規定違反になり保証が切れてしまうそうである。地場のビルダー・工務店なら数千円程度の工事だがハウスメーカーでは数万円の工事になったことはいうまでもない。外装の塗り替えになるとその価格差は唖然とするほどである。本当にコストを比較するならリフォームの価格で比較するのがいいのかもしれない。なんだかんだいっても、一番のローコストは工事をする地元の職人に直接頼むことだろう。長期的な維持管理の視点から言えば、地元の職人(工務店・ビルダー)による家守りがグッとお得に感じるはずだ。
これを読まれている方の多くは、「冬は寒くて当たり前、夏は暑くて当たり前」 だと思ってないだろうか?だから「家なんてどこで建ててもそれほど変わらない」と思われるのであろう。ところが全く違うのである。1970年代に起こったオイルショックを機に、セントラルヒーティング、全館暖房が当たり前だった欧米では光熱費が高騰し危機意識が高まり、住宅の省エネ化、つまりは高断熱・高気密・高効率換気・高効率給湯が一気に進んだ。一方日本ではオイルショックが起きたときも問題になったのはトイレットペーパーで、暖房も間欠暖房・個別暖房であったため省エネ化に見合う建築コストの上昇は受け入れられず、そもそも住宅の耐震化をまずは目指す段階にあった。欧米ではもう50年近く住宅の省エネ化・高断熱化に取り組んだ結果、全館暖房で半袖でいられるほどの室内を10帖用のエアコン程度のエネルギーで実現できるほどになった。そう、冬は暖かく、夏は涼しく過ごせる家が当たり前に出来るのである。
日本でもここへきてヒートショックで亡くなる方が交通事故死者数を上回るようになり、夏は熱中症で亡くなる方も急増し、東日本大震災によって「省エネ」が避けては通れない課題となった。政府も2030年に新築住宅のZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)を標準化しようと法制度も含めた大規模な計画を立てている。ZEHとは、住宅で使うエネルギーと創るエネルギー(主に太陽光発電)を差し引いたとき、創るエネルギーが0(ゼロ)以上になる住宅のことである。当然、住宅の省エネ化が求められる。
現在35坪ほどの戸建の住宅では、光熱費として毎月平均でおおよそ電気代・ガス代とも13,000円ぐらいで合計で26,000円かかっているのが標準的である。それを住宅を省エネ化すると電気代ガス代併せて10,000円を切るくらいまで削減ができる。しかも全館冷暖房で!である。これに太陽光発電等の創エネ設備を導入しZEH化すると、光熱費が0(ゼロ)円以下になるのである。これはつまり、現在の低金利の時代なら、普通の家と省エネ化された家とでは30年で、800万円以上の差を生み出すのである。
言い換えれば、イニシャルコストで1500万円かかる普通の家と省エネ化された2200万円の家では、後者の2200万円の家の方が「ローコスト住宅」となるのである。しかも住み心地は劇的に違うのに!である。
単純に「ローコスト住宅」とはいっても色々あることを知ってもらいたい。
どちらを選ぶかは現在のところ建築主の自由だが、2030年には法律により後者しか建てれなくなることを知っておくべきであろう。また将来、家を暖かく・涼しくしたくても住宅の省エネ化はリフォームでやろうとするととっても大規模な改修、建替えるくらいの工事が必要となり、新築の段階でやっておくべきことだとあらかじめ認識しておいて欲しい。
以上、本物のローコスト住宅の見極め方である。
省エネ化された先進的な近未来の住宅モデルが埼玉県さいたま市西区と入間郡毛呂山町にあり、実際にみることができる。どちらも建坪が30坪前後の等身大の建物である。興味のある方は無料で見学できるので是非一見を勧めたい。
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