「経験と勘の家づくり」からしっかりとしたエンジニアリングへ
地震国日本において長期的な不動産価値を維持するためには「地震に強い」というのは大前提であり、不動産的観点から言えばこれは譲れない条件です。
ほぼすべての建築業者さんが建築基準法に定める簡易的な壁量の計算をもって、地震に強いと謳っていますが、ほんとうに必要な壁量は法の最低限度で定められたものを満たすだけでは足りません。ほんとうに必要な壁量は、水平力を算定してそれに見合う壁量を算定するしかありません。
木造住宅も3階建てになるとほんとうに必要な壁量を計算しなくてはいけません。本当に必要な壁量からさらに1.25倍の強度をもたせているのです。それは地震力・風圧力の算定を始め、外壁、屋根荷重の算定などしっかり行なって、地震に強い家で安心して住んでいただきたいからです。木造住宅の2階建て30坪の大きさの住まいも、使用材料から見付面積の算出、積雪量をはじめ地域風速から、必要壁量を算出し、耐力壁の配置をして、更に偏心率や水平力の検討をし軸力と応力を検討、金物選定までしたら最後に基礎の構造設計をすると、細かい字と図でA4でおおよそ150ページほどの分量になります。
不動産的に言えばデザインよりも、安心安全な住まい、これを重要視します。これは不動産的な価値なのかもしれません。
上の動画は、全く同じ間取りの家で構造の強度だけ変えた建物モデルです。建物に表示されている数字が強度だと思って頂いてOKです。1.0と表示されているものが現在の法律で定められた強度をもつ建物。それ以下の数値の建物は昭和56年以前の旧耐震といわれる建物の強度だと思ってください。
それぞれの建物を平成28年に起きた熊本大地震の揺れを起こし、どこまで耐えられるか再現したモデルです。1.5を超える建物でも倒壊しているのが分かります。しっかりと許容応力度にて検討した建物はやっぱり強かったことが証明されています。
不動産業者は家のことを「物件」といいます。建築業者、ハウスメーカーは「商品」です。設計事務所は「作品」です。資産価値というところに視点を置く不動産業者は、耐震性能は譲れない基本性能です。
東京都庁を設計された丹下健三氏は、竣工後たくさんの雨漏りが起こる庁舎について問われると、デザインコンペの作品だからと一蹴されたという話は有名です。建築的視点と不動産的視点、この違いを住宅を建てたり購入される方は注意したほうがいいでしょう。不動産業者は家のことを「物件」といいます。建築業者、ハウスメーカーは「商品」です。設計事務所は「作品」です。私たちは不動産的視点で家づくりをいたします。
湾岸エリアでの地震がいつ起きてもおかしくない状況の中、これから建てる住まいの耐震性に注意をはらい、意匠設計後にしっかりとした構造設計を依頼されることをお勧めいたします。
性能×デザインに優れた住宅設計は、均一な間取りというわけにはいきません。風の抜ける快適な家の間取りは、その土地にあった設計が必要とされるからです。そうなると、見えなくなる骨組み、構造についても一棟一棟個別の検討が必要とされるのは当然でしょう。でもハウスメーカーさんの家も含め、個別の検討は普通行なってくれません。
住ま居るの家は全て個別の耐震設計をお約束。住宅性能表示制度でいうところの「耐震等級2・3」をクリアする耐震設計。しかも無料で。見えないところでも頑張っています。
住ま居るの家が参考にしている構造検討書
日本の建築の歴史は地震の歴史ともいえます。大きな地震が起こる度に耐震性能が強化されてきました。
昭和23年 福井地震
昭和25年 建築基準法制定 震度5強~6で倒壊しない程度
昭和53年 宮城県沖地震
昭和56年 新耐震基準制定 震度6強~7でも倒壊しない程度
平成7年 阪神淡路大震災 → 新耐震基準で建てられた建物は倒壊せず。耐久性基準追加。
平成9年 欠陥住宅の社会問題化
平成12年 住宅の品質確保促進法 耐震性能等の表示制度
経験と勘の家づくりからエンジニアリングへ変革
平成17年 耐震偽装問題(姉歯事件)
平成20年 住宅瑕疵担保履行法 建築基準法 建築士法改正 罰則強化
建物に保証がついた、ハコとしての住宅の制度が完成
平成21年 長期優良住宅の普及促進法
平成23年 東日本大震災 → 建築の法令の改正は無し
未だに多くの業者さんが「地震に強い」と宣伝していますが、大地震で倒壊しないということが目的であれば、瑕疵保険に加入する全ての建物は地震に強いといえます。住宅性能表示制度で
定められた耐震等級も
- 耐震等級1:建築基準法に適合
- 耐震等級2:耐震等級1の建物より1.25倍強い
- 耐震等級3:耐震等級1の建物より1.5倍強い
法が生命を守るというというところに重きを置いているので、全壊しないレベルを国中で達成しようとしています。それが、昭和56年の新耐震基準に適合した建物かどうかが基準となっています。
但し耐震等級の計算も、許容応力度による計算は求められておらず壁量(軸組)計算という簡易的なもので2階建の木造住宅なら出来てしまいます。本当に必要な壁量は許容応力度による計算でなければ求められませんが、机上と現場を両方視ている身としては壁量計算で十分なので必ず計算して長期優良住宅が求める耐震等級2を確保して欲しいと思います。
この計算をすると、筋違いや合板の壁の強さを高めると、その壁を支える階上の床剛性も高めななければいけなくなります。しかしメーカーが宣伝するのはあくまで壁の剛性で床の剛性について語るメーカーはありません。
建物内部の適切な壁配置のほうが建物剛性をとても強くするのですが、宣伝には不向きなのでしょう。構造をしっかりと勉強している建築士(木造住宅なら2級建築士の方が詳しいことも多々あります)なら、ただの壁強度の増加は逆に不利になることをよく知っています。
木造住宅の許容応力度計算は建築士のほとんどが出来ないものですが、最低でも壁量計算くらいはハウスメーカーの設計者も知っておいて頂きたいものです。自社の建物強度が壁単体の強度が高いから強いなんて、構造設計する建築士や検査機関に笑われてしまいます。
壁倍率(壁の強度)を謳うメーカーほど、個別の耐震設計をしない傾向にありますので注意が必要です。
建築確認申請では、2階建の木造住宅等は4号建物といって構造審査が省かれてしまいます。注文住宅を建てる前に、自宅の設計者に構造検討に関わる設計図書の提出を求めるといいでしょう。優良で善良な設計者(建築会社)なら躊躇無く提出してくれるでしょう。なぜなら、審査は省略されているけれど、検討の省略は許されていないのですから。耐震等級2の検討がしっかり出来る建築会社なら「地震に強い家」は普通に建ててくれます。
設計者が「ちゃんと」構造の検討をしていない家がたくさんある!?
M’s構造設計事務所代表の佐藤氏は、中越地震、中越沖地震を直に経験された新潟に事務所を構えられている木造住宅の構造の分野では一家言ある先生で、阪神淡路大震災から昨年の熊本大地震にいたるまで現地に足を運び調査をされるような、木造住宅の構造についてかなりこだわりのある先生です。その先生が我々住宅事業に携わる建築士・営業マン・経営者向けに「4号特例」という、住宅のような小規模建築物の確認申請における「設計図書の省略」が大きな問題を生んでいる実情を最近の事件を元に語られました。
埼玉県では火災の被害者を救済する目的で始まり、建築費の安さを前面に打ち出し圧倒的なシェアを誇る埼玉県の「県民共済住宅」において、建築基準法の基準を満たしていない建物が多数発覚するという、耳を疑う事件がありました。半公的機関だから利益を追求せず「安かろう悪かろうでは無く地震にも強い」を前面に打ち出している「県民共済住宅」が耐震基準に満たない住宅を多数建築して引き渡していたのです。会見で県民共済住宅の社長が「今までの地震で事故の発生はないため、すぐに倒壊につながるとは考えづらい」と発表されたことに、被災地で様々な倒壊した建物を見てきた佐藤氏は『大きな地震が埼玉では起きていないのに倒壊のおそれが無いとは”何を根拠に!!”』と怒りを持って語られていました。
さらに、岩手県北上市で建物の所有者から市に「建物が揺れる」との相談から発覚した事件があり、市が問題の建物が建築された時期の12棟を調査したところ、12棟の内11棟で基準法に満たない設計ミスが発見されたそうです。設計責任者の建築士は市の調査に「強度の計算をせず、経験に基づいた感覚でやってしまった」と謝罪したそうです。この「経験に基づいた感覚で」というところに佐藤氏は問題があると仰られていました。
ちゃんと一生懸命やった!
佐藤氏が言われるには、一生懸命ちゃんと設計をした!とどの設計者もいうそうです。で何を「ちゃんと」設計したのか聞くと答えられない設計者がたくさんいると言うことです。「ちゃんと」やる設計とは、ただ普通に法令に依る設計図書の作成をして申請し、その通りに造られているか監理することです。「4号特例」は耐震の検討をしなくていいことではありません。”申請図書から外されているだけ”という違いをあまりに勘違いしている建築士・設計者が多いそうです。
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