日本の窓の性能 13カ国中 第何位でしょう?

世界の国々での窓の断熱性能に対する最低基準の国際比較から、日本の家の性能が世界の中でどのレベルか確認します。

2012年時点のU値比較です。現在日本以外の大多数の国々が基準値のさらなる厳格化を進めております。日本では2020年に改正(制定)予定です。

日本の順位

第13位

最下位

Uw=6.5 この数字は一般的なアルミサッシの単板(一枚板)ガラスの窓の性能値です。

つまりこれ以上最低となると障子とかになるので、歴史的建造物以外では現在、住宅としては考えにくいものですが、日本の既存住宅5700万戸の80%以上を占める窓がこの性能値です。そして日本では、断熱の基準が今のところ法で規制されていないので、このアルミサッシ単板ガラスの数値を記載しております。

新築住宅なら、ほぼ全てが「ペアガラス」となっているでしょうから、「Uw=4.65」となります。確かにアルミの単板ガラスに比べれば、6.5-4.65=1.85も性能値が上がっているので良さそうですが、世界の国々では住宅で使用することは禁じられています。世界の国々が1.0~2.0の性能を競っているのに、日本では4.65の窓が2015年の省エネポイント対象製品という状況です。そして2015年には、ドイツがU値0.9以下、中国も2.0以下、韓国では推奨基準として1.6以下となっています。日本(埼玉)の推奨基準が4.07以下(アルミサッシLOW-Eペアガラス)なので、際だって低いことがうかがえます。

残念ながら、日本の家の窓は圧倒的な低レベルで「最下位」です。

何故、そうなってしまったか?

耐震一流・設備一流・断熱三流の日本の家

①耐震一流

日本の住宅の歴史は「地震の歴史」ともいわれるぐらい、耐震性能の強化・制定の歴史でした。

しかしそれも阪神淡路大震災を経て、昭和56年に制定された「新耐震基準」に則った建物であれば「倒壊しない」と実証され、以降基準はほぼ変わらず、耐久性能が加わり現在に至ります。

この「新耐震基準」後の建物かどうかで現在「耐震改修の必要の是非」が判断されています。

2000年に住宅性能表示制度が始まり、簡単に言えば、耐震性能が等級1(新耐震基準)から等級3(新耐震基準の1.5倍の強度)までが規定され、姉歯事件、耐震偽装問題があってその後、保証(保険)も義務づけられ「ハコ」としての建物の耐震強度は完成に至りました。世界に類をみない構造強度を誇る建物が日本の標準です。普通に建築士が設計した住宅であれば、どこの会社で建てても「耐震性能」については世界一流といえます。

②設備一流

次に住宅設備は世界を牽引する工業国日本らしく「ウォシュレット・暖房便座」を初めとするトイレ製品を筆頭に世界をリードしているのは、中国からの観光客が「TOTO製品(ウォシュレット)の爆買」とのメディアの報道から良く知れているところでもあります。そしてヒートポンプによるエアコンや冷蔵庫等の省エネ性能は世界でも有数の優れた製品でもあります。新築住宅を建築するに当たり、特段の注意を払わなくても「エコ水栓」「節湯型機器」「高断熱浴槽」「エコキュート」「LED照明」など当たり前にする業者さんがほとんどだと思います。日本が予定している2020年の省エネ住宅の制度自体も、こういった「工業国日本」の省エネ設備に頼る面が大きいといっても過言ではないでしょう。そこに住まれる方を基準に考えれば、設備の性能ではなく、建物自体の性能を重視すべきと思いますが、そこら辺が日本と欧州との考え方の差といえるかも知れません。

③断熱三流

1970年代までは、日本を含むほぼ全ての世界中の国々で住宅は「無断熱」が当たり前でした。オイルショックが起き、冬場の全館暖房が当たり前だった欧米を中心に、家の断熱化が始まりました。「全館暖房」が当たり前だったので、家の断熱化によるエネルギー消費量の削減はすなわち大幅な光熱費の削減にもつながり欧米で急速に普及し、家の省エネ化に対する制度やノウハウが整っていきました。それが1980年代の欧州です。それが京都議定書、COP21と着々と進み現時に至り、今では日本で最高性能といわれるアルミ樹脂複合サッシ14mm以上LOW-Eペアガラスガス入の窓(2.33W)は住宅用としては使用禁止されており、物置用としてたたき売られるほどの差が生じています。

日本(埼玉)では大手の高価格なハウスメーカーでさえ標準の窓はアルミ樹脂複合普通ペアガラス(3.5)、断熱を謳うメーカーでLOW-Eペアガラス(2.9)、普通の工務店やデザインにこだわる設計事務所等では高価格帯の建物でアルミサッシのLOW-Eペアガラス(4.07)となっています。

この先の性能を重視するところでペアガラスの空気層は14mm以上がいいとか、アルゴンガスやクリプトンガスといったガス入りがいいとか、よく知っている方(実はこちらの知識の方が大切)で、ペアガラスのスペーサーはアルミではなく樹脂がいいとなってきます。

①の耐震性能が整い、東日本大震災によってエネルギー使用のあり方も問われている昨今、やっと日本も断熱性能の義務化に動き出しました。それが平成23年度に大幅に見直しされた省エネルギー基準です。平成11年の「次世代省エネルギー基準」というとっても優れていそうな名称を含め大幅に変更されました。それらの法整備をまとめ2020年に施行する予定となっています。日本で初めての断熱性能の法制化なので、大変慎重に丁寧に進められていますが、その基準でさえ世界の国々からみると嘲笑を受けるような低レベルであり、欧米の1980年代の基準よりも緩い規定となっています。ですので断熱性能については、現在が2015年なので欧米各国におよそ40年遅れているのです。

日本政府も2020年に断熱性能の義務化、2030年のZEH(ゼロエネルギーハウス)の標準化を経て2050年に欧米の基準に追いつこうと計画しています。

 

サッシ(窓)を変えるだけで日本の住宅の性能は格段と上がります。仕入れ原価は、延床30坪(100㎡)の住宅の単純計算で、アルミ単板ガラスサッシを基準にすると、アルミペアガラスサッシ+50,000円。アルミLOW-Eペアガラスがそれから+80,000円、アルミ樹脂複合LOW-Eペアガラスサッシがさらに+100,000円、樹脂製LOW-Eペアガラス+50,000円程度なものです。注文住宅を建てるのに総額いくらかかるか知りませんが、世界レベルの窓を付けるのに「28万円程度のコスト」はたかいでしょうか?安いでしょうか?多分光熱費で数年で元が取れてしまうでしょう。しかし取付手順等がアルミと樹脂では異なりますので、一定の研修を受けないと雨漏りや破損等の不具合につながります。建築業者(現場監督)や大工さんからみれば、勉強しなければいけないことが面倒で、出来ればしたくないことなのでしょう。

建築業者側の不勉強により、「高いよ!」「そこまですることない!」と根拠もない決めつけ台詞を鵜呑みにすることなく、このサイトで色々と勉強して、子ども達が遺されて嬉しい「価値ある住宅」を是非建ててください。

先進7カ国では、住宅価格はほぼ同じです。しかし、ずば抜けて低い性能の日本の住宅価格は「高すぎる」ともいえます。諸外国では建てることすら許されず、ヒートショックや熱中症と隣り合わせの低性能な住宅をこれからも建て続けるのですか?全ては建築主様の選択にかかっています。